自信喪失

そんなに広いとは言えないポケモン二時創作小説界においても「戦争」「生と死」というグンバツに重たいテーマに真正面から取り組んでいるハードなノベラー、霧島さんから恐れ多くもTBをもらってしまったので、がんばってお応えしたいと思います。頑張って。

小説版ポケモンカフェが本来の役割を果たせなくなったことや、MAPの2次審査落選後に送信してもらった審査員の厳しい評価、SE2の後々に気づいた、または気づかされた指摘の対処で、SE2は無理にポケモン小説として当てはめているのではないかと思うようになってしまった。

個人的には(非常にポジティブな意味で)「SE2」は「ポケモン」というジャンルに頼らなくても十分独り立ちできる小説なのでは?と思っています。誤解を恐れずに言うならば、私は「SE2」の根底にあるテーマが「戦争」とか「生と死」だと思っています。これらのテーマ、思うのですが、全体として「ほのぼの」感の漂うポケモンと組み合わせるのは、非常に難度の高い業ではないでしょうか。

難度の高い業に挑戦する以上、並大抵のやる気では達成できっこないわけです。幸い霧島さんの場合は「SE2」に並々ならぬ思い入れをしてらっしゃる。(企画掲示板の過去ログを読めば大体わかります)そして、今でもそれが消えたようには見えない。部外者の勝手な推測ですが、霧島さんはまだ「いや、ここで退くわけにはいかない」という執念にも似た信念をまだ持っていると思っています。

えー、あんまり固くなってもよくないので、少し口調をほぐします。

自分もこの作品は読んでいるのだが、単なるストーリーでしか読んでいなかったのだと思うようになった。
ノベラーが他のノベラーの作品を読むということは、小説の技法を知るという意味も含まれていることを、今になって知った自分がいかに未熟者かつ愚か者であることに気付いたのだ。

これは私にとっても実に耳が痛い話なんです。今年の七月、「Enable」の執筆を再開するに当たって、「他の人の小説も読んでみよう」ってことで、ろみさんの「レイ冒」を手にとって読んだんですが、そこで思いっきりショックを受けたんです。何でこんなに上手いんだ、どうしてここまできっちり先を決めて話を書けるんだ。七月のはじめは小説には手を出さず、ひたすら今後のプロットを練りました。ええ、あまりにショックだったんです。自分がいかに先を考えた話作りを怠っていたかというのがわかって。

で、ストーリーは自分でもこれ以上ないぐらいしっかり組めて、登場人物一人一人の特徴もかなり微に入り細に入り決めて、よしこれで完璧だ、何も思い残すことはない、一気に書き上げよう、ってことで、八月〜九月は狂ったように「Enable」の執筆をし続けました。本当に自分でもおかしいぐらいのペースで書いてました。一日に四話とか。いや、さすがにそれが毎日、という訳じゃありませんけど。

書いていないときでも「ここはこうしたらいいんじゃないか」「このキャラクターの過去はこうした方がいいんじゃないか」といった感じで設定やプロットを付け足し付け足しで、どんどん話の深さが増していって、それに比例して自分の書いている「Enable」という作品にすごい自信を抱くようになり始めたわけです。それはもうこんな感じで↓

「もしかしたら『Enable』はマサポケを代表する小説になれるんじゃないか?」

ええ、何考えてんだヴォケって感じで。ヴァカか貴様はみたいな感じで。

それで昨日ですよ。暇つぶしに「FS」の第二十六話を開いたんですよ。

自信が一気に吹き飛びましたね。いや、もう本当に。この感覚は滅多にあるものじゃありません。一番最後に感じたのが多分三〜四年前にとあるアニメの二次創作を読んだ時でしたから、久しぶりの感覚だったわけです。衝撃があまりにも大きすぎて、まともに受け止められない。そんな感覚です。

自分がいかに「Enable」に過剰な自信を抱いていたか、どれだけ小さい井の中で偉そうにしていたかがよく分かりました。いったい何がそんなにショックだったのかというと、下でも書きましたがズバリ「表現技法の差」です。

私が自分で考えたストーリーを展開したいが故に、似たような表現が続いても致し方ないとしているのに対し、かずいさんは違う。言葉の一つ一つに並々ならぬこだわりを感じますし、妥協したところが(私の目では)見えない。恐ろしいぐらいの差です。あれだけ「Enable」に自信を持っていたはずなのに、そんなのどこかへ吹き飛んでしまった。むしろ今まで自信を抱いてたこと自体に疑問を持つぐらいに至りました。

ただ、最初の衝撃からしばらくして、ちょっと持ち直したわけです。↓こんな感じで。

「『Enable』と『フルスピード!』は、読者に見せたいものが違うのではないか?」

「フルスピード!」に関しては私は完全部外者ですし、かずいさんが「フルスピード!」を通して何を読者に伝えたいのか、今のところはまだわかりかねています(これはかずいさんの問題ではなく、586の問題です)。そもそも、586はそんなことを語れる立場にはありません。が、「Enable」は、複雑な人間関係と過去の出来事に成り立った人間と携帯獣が織りなすドラマを描き出したい、そういう確固たる目的があるわけです。

目的を思い出すと、無くしかけた自信が案外簡単に復活してきました。確かに私は表現技法では無抵抗敗北を喫しましたが、ストーリーなら最悪相打ちぐらいには持ち込めるぞ、と。えー、攻撃的な物言いになってしまったので言い直すと、ストーリーなら私にもある程度の自信はあるということです。気を悪くされた方、すみません。

えー、勘違いしそうな人がいると困るのであらかじめ書いておきますが、私は別に「勝ち負け」を競っている訳ではありません。ただ、そうは言っても、人様の作品を読んで「負けた!」という感覚を感じることは当然あるわけで、それを受け止めて「ならば私はここで勝負しよう。ここは絶対に手を抜かないでいよう」という考えに至るわけです。

まとまりがなくなってきましたが、かずいさんの「フルスピード!」は私586にとってすごく良い刺激になりました。完璧な自信喪失をしてしまうほどの刺激というのは、それだけ自分のスタイルにも影響を及ぼしてくれます。勝ち負けではなく、自分を高めていく理由として、「『フルスピード!』には表現技法で見劣りしたとしても、別の面でしっかりと『読ませる』作品を書くよう心がけよう」という考えを今持っています。

というわけで、途中から霧島さんへの返信なのか自分語りなのかよくわからなくなってしまって大変申し訳ありませんが、この辺で終わりたいと思います。