ひぐらしのなく頃に

盛大にネタバレなので「続きを読む」にて。


正直このレビューを書くに当たり、私は大変困っている。何がどう困っているかを説明するとそれなりに長くなるのだが、とりあえず大変困っていることに間違いは無い。というのも、書こうと思って準備しておいた内容が一部を除いてオジャンになってしまったからだ。まっさらなウィンドウに一から文字を埋めていくのは大変苦痛であるが、とにかく今日「ひぐらしのなく頃に」の実写映画版を観に行ったことは間違いないことであるし、前々からレビューする気満々だったので、ここはきちんとレビューせざるを得まい。

いきなりで申し訳ないが、前提条件として「私(586)はひぐらしをほとんど知らない」ということを記しておきたい。断片的には知っているが、それらがどう繋がっているのか、物語においてどのような意味を持っているかはまったく知らない。例えて言うなら「L5」や「雛見沢症候群」などの言葉が独り歩きし、「ナタを持った竜宮レナ」「金属バットを持った前原圭一」などの登場人物が宙ぶらりんの状態で存在している、そんな状態である。端的に言うなら、原作がどういう話かをほとんど知らないということだ。*1

しかし、そういう言わば「まっさら」な状態であるから、逆に実写版「ひぐらし」を素直に受け入れることのできる可能性もある。前回観た劇場版「CLANNAD」では散々な目に遭ったが、今回特に原作に対する思い入れは無い。誰がどのタイミングで登場し、行動し、発言し、退場しようが、話の筋が通ってさえいれば問題ないと考えることが出来る。むしろ私のような「無知」な人間が観た時、「ひぐらし」はどのように映るのか。この映画を観に行く層は相当限られていると想像でき、さらにその層の大部分が原作でのイメージを抱えている。そういった中、何の前提条件もなしに映画版を観に行く事のできる私はある意味特異であり、またある意味幸運であるとも言えるのではなかろうか。

そういうわけで、私は本日「CLANNAD」を観に行った因縁のなんばパークスシネマに一人出向き、実写版「ひぐらし」を最初から最後まですべて観てきた。その感想を以下に記す。

ファーストインプレッション

就職活動においてエントリーシートを書く際、心がけたことの一つに「結論を最初に述べる」というものがある。今回も、まず結論から述べることにしたい。

結論として、実写版ひぐらし「思っていたよりも悪くなかった」。観る前に想像していたものは相当酷いものだったのだが、蓋を開けてみると意外や意外、きちんと通すべき筋は通している。原作の筋を知らないので推測になるが、恐らくこれは一番最初の「鬼隠し編」に当たる部分なのだろう。アニメや漫画で断片的に見たシーンも押さえてあったし、原作知識の無い私もスムーズに話へ入り込むことが出来た。「夏の山村」というロケーションの持つ特有の雰囲気も出ていたし、少なくともごく普通の映画としては問題ない水準にあることは間違いない。

最初に「困っている」と書いたのは、用意していた文章が「余りにも酷い映画である」という前提の下に書かれたものであり、そこに来てそこそこよくできたものを持ってこられると困ってしまう、ということである。ここからも分かるとおり、実写版「ひぐらし」はそれなりにきちんと作られているのである。最低でもデビルマン」や「キャシャーン」レベルの映画ではない。そこで困ってしまったというわけなのだが、この話はこれくらいにしておく。

原作は昭和後期ということで、各種の小道具もきちんとその時代のものに合わせられている。スクリーンに映し出される風景は、(「夏の山村」というイメージだけでプラス補正がかかってしまうことを考慮しても)かなりきちんと雰囲気が作られている。音楽も、やや低音を使いすぎる嫌いはあれど不快なものではなく、その場その場のシーンを的確に形作っていたといえる。各種の演出も決して悪くはなく、単体の映画として見た場合は極めてまっとうな作りがなされているといえる。

ストーリーも、各種のレビューを読む限りでは概ね原作に忠実なようだ。やや展開が速いと思えるシーンもあったが、理解できないストーリーではなかった。この辺り、脚本は相当練られていると思われる。原作で必要な要素を上手くまとめ、きちんと90分の枠に収めている。私のような「無知」な人間でもストーリーを追いかけられるよう、要所要所で必要な要素の説明をしてくれる(それも自然な形で)。特異な世界観を持つ「ひぐらし」だが、少なくとも第一部の段階においては、私はストーリーについていけず置いてけぼりにされるようなことはなかった。

真面目な雰囲気作り、丁寧なストーリー構成、邪魔にならない程度の音楽。突出したものは無いが、どれも手抜かりなくきちんと作られており、この辺りに不満や違和感を感じることはなかった。最近の邦画の中でも、決して悪く無い部類に入るだろう。演出も(後述するとおり、幾つか極めて不味いものはあったが)無難にまとまっている。しかし、私は正直すっきりしない。はっきり言ってしまうなら、もう一度この映画を見たいとは思えない。それは生理的な嫌悪感ではなく(むしろストーリー構成は面白かったし、演出も中々のものだった)、ここまでで敢えて触れていない、一番重要な箇所にある。それは――

キャスト

ここで問題になるのが、登場人物を演じる役者があまりにも終わっていることである。原作に思い入れの無い私ですらこのキャストはありえないと考えてしまった。何がどう不味かったのか。挙げればキリが無いが、一言で言ってしまうなら「大根」である。役者が全員大根なのだ。特に、メインキャストである圭一やレナの終わり方が凄まじかった。特に圭一。余りにも酷すぎて、劇中何度か目を逸らしてしまった。とにかく酷い。酷すぎる。むしろ痛い。痛すぎる。

例によって結論を先に述べると、演技力に問題がありすぎる。私は役者ではないので何をどうしろといわれても困るが、これだけは言っておきたい。常に無表情なのはどういうことか? 最初から最後までまったく同じ表情だったという記憶しかない。おまけに台詞に感情がこもっていない。何箇所か発音が狂っているのも確認した。一般人らしさを出そうとしているのかどうかは知らないが、私は「映画」を観る為に1800円も払っている。役者としての演技を見せてもらわないと困る。

レナも相当な破壊力だった。特に、「文字」を使った「嘘だッ!!」は絶対に無いだろうと思った。演出家が発狂したとしか思えないが、発狂の辿りつく先が恐ろしくチープなのが泣けてくる。が、最低限の演技ができている分圭一よりはマシだ。それだけ圭一が酷かった。何がどう酷いのか一々説明するのも面倒なくらい酷かった。無表情、大根、棒読み。駄目な役者のすべての要素を注ぎ込んだらああなるのではないか? 本気でそう思った。残りのメンバーに関しても演技は褒められたものではないが、それでもまだ圭一よりはマシだった。圭一の酷さは限度をとっくに超えている。あの無表情な顔を思い出すたびにキーボードを叩く手が強まる。徹底的に酷い。最悪に酷い。最低に酷い。

雰囲気も演出も音楽もストーリーも及第点だというのに、キャストがあまりにも酷かった。ここが非常に残念でならない。

まとめ

長々と書いたが、私の中で実写版『ひぐらし』は「決して悪い映画ではないが、決して期待して観てはいけない(特に役者)」という形で結論付けられた。ストーリーや演出は決して悪くないし、雰囲気も出ている。だがキャストは最悪だ。この一点が恐ろしい勢いで評価を落としている。あの様子だと確実に続編が製作されるだろうが、個人的にはキャストを総入れ替え*2してほしいくらいである。雰囲気作りやストーリー展開は良かっただけに、それを演じる役者が酷いのは勘弁して欲しい。

続編も気になるが、とりあえず圭一を何とかしろ。いや何とかしてください。それだけが私の望みです。

それだけが私の望みです(大事なことなので二回言いました)

*1:一方的な思い込みと妄想で話を作り、そこからさらに想像を織り込んで書き上げたのが「パニッシュメント」であることを正直に白状しておく

*2:それが無理ならせめて圭一だけでも